二度事故ったことありますか?

2021年8月。
朝、METRO高崎店に到着。私は入り口から離れた反対側、これだけ離れた場所だったら絶対ぶつけられることは無いだろうと思われる定位置にMINIを停めている。あれから一年経つ

" あの場所 "

に停めなくなったのは自然なこと。MINIを降りて正面入り口まで歩くと、大きな紙に「お客様各位」との長い文章を目で追いながら、

私「ウソでしょ」

メトロジャパンは廃業します。日本から撤退。ご愛顧賜りありがとう!ってやつ。
本社をドイツに置き、世界で展開するMETROは私が在仏時も利用した事のある存在だった。店内のレイアウトもフランス本国と同じで、定期的に視察に来るフランス人幹部を、初代店長の I さんが引き合わせてくれて、拙いフランス語を使う機会を設けてくれた。私はふらつきながら店内へ、受け付けの椅子にヘナヘナと座る。フロントのKさんに「なんで〜?」と尋ねる。

Kさん「私達も今朝聞いたんです」

私は、東京本社に移動していた I さんの携帯に電話。いつもの明るい I さんの声が私の耳に届いた。

私「なンとかならないンですか?」
 I さん「本社の決定なので、日本に居る私達にはどうする事も出来ないんです」

電話を切った私はKさんに、メトロはいつまでやるのかを訊く。

Kさん「営業は10月31日までやりますけど、私達は年末まで仕事して、本社は来年の3月までと聞いています。最後の日、閉店式をするので出席してください」

10年間取り引きをしてきて、私はあまりにも早い終焉に納得するまで数日を要した。
10月になると、メトロ店内はかなり商品が減って閑散としてきた。閉店式に花を持って行こうと私は考え、前日の30日土曜日に上中居町のフラワーショップ花扇へ赴き、素敵なブーケを購入。明日は花扇の定休日だから。
MINIの助手席にお花を置き、プラリネに注文しておいたバゲットを受け取る為にMINIを走らせた。
・・・・・
15時25分、現場は高崎市下和田町3丁目11の3。城南球場近くの交差点。私は第二車線を西へMINIを走らせていたンだけど、前方で路線バスが右折待ちで停車。私の前を走るコンパクトカー1台とオートバイ1台がバスの横をすり抜けて行く。私も続こうと左に膨らんだ時、第一車線を走行中の大型トラックが加速。
トラックの存在は承知していた。私は「察してくれるだろう」と甘い考えでアクセルを踏ンだのが悔やまれる。MINIがバスに並んだ瞬間、

ガガガガガガッ!

はぁ。
やっちまった。前方で減速するトラックは第一車線を塞ぎ気味にハザードランプを点滅しながら停車。私はゆっくりとトラックの前方へMINIを動かす。後方車のみなさん、ご迷惑をおかけします。
トラックドライバーの男性(Sさん)に声を掛け、過失割合を論じるつもりはなく、私は迷惑をかけた事を詫びる。
その後、警察車両が二台やってきて、警察官の皆さんは交通整理を始めながら我々二人に事情聴取をする。私は運転席に戻り、MINIのエマージェンシーボタンを押して女性のオペレーター(OP)と応答。怪我の有無を訊かれてから、

OP「場所は確認出来てます。レッカーの手配をしますので、安全な場所で待機していてください」
私「レッカー車の助手席に乗って帰ってもいいでしょうか?」
OP「それは駄目なんです。タクシーか電車か迎えに来てもらうか、他の手段を使ってください。交通費は二万円まで保険で出ます」

そこへお巡りさんが「あなた、リラダンさん、ですよね」

なンでオレを知ってンのよ(驚)

タクシードライバーがリラダンの駐車場で私に暴行した事件。もちろん返り討ちにしたけど(そのうち書きます)

あの場に居たンですか!

周りに居た他の警察官達が「私も」「ボクも居ましたぁ」 同窓会w
いやぁ、アノ時はお世話になりました。と盛り上がりながら、私はトラックに書かれた会社名を見た。

ウチのソワニエだよw

Sさん「そうなんですか?」

私はSさんに名刺を渡す。社長のTさんに「ゴメンナサイ」って伝えてっ

コロナ禍真っ只中、我々はお互いの手を固く握り合う。私は手を振り、Sさんも応じてトラックを発進。仕事、頑張ってね!

私は「第一車線を占拠してる私のMINIを脇道に移動させたい」とお巡りさんに申し出る。警察官達の誘導で渋滞は解消。その後、MINIエマージェンシーが手配したキャリアカーが到着したのを見届けたお巡りさん達は署に戻って行った。

私「お世話になります」
Hさん「Hといいます。どこへ持っていきますか?」
私「MINI伊勢崎へ持っていってください。で、Hさん、実は私の自宅が上大類町で、通り道なンです。隣りに乗せてもらえないでしょうか。ホントはダメなの知ってるンですが、、」
Hさん「いいですよ(笑顔)」

ありがとうございます!
私は助手席に乗り込む。今回、レッカーでなくてキャリアカーにしてもらったのもHさんのご配慮。ドナドナで転がしていくより、載せた方がいい。重ねて感謝です。
車内で名刺交換。
Hさん「リラダン知ってますよ」
なんで!
Hさん「前働いていた会社で、みんなで行こうって言ってたんです」
その会社の社長、知ってます。

リラダンに到着した時、既に陽は落ちて。Hさんは私を降ろした後、MINI伊勢崎へ向かったのだった。これがきっかけで現在、Hさんはリラダンのお客さん。
・・・・・
その後、代車を手配するレンタカー会社(Tさん)から電話が入る。
Tさん「MINIクラブマンを手配しました。ただ、今日中となると夜10時を回ってしまいます。明日にしましょうか?」
私「何時になってもいいです。明日の朝から使いたいので」
夜、クラブマンがキャリアカーに載せられてリラダンに到着。私のMINIと同じペッパーホワイトのクーパー。かわいい!
私「これ、千葉ナンバーですよ?」
Tさん「高速使って来ました」

まじですか

MINI伊勢崎の手配したクラブマンは、高崎にも支店があるザッツレンタカー。損保会社や法人向けの、高級車専門のレンタカー会社。マセラティ、ポルシェ、ベントレーなどを扱う。
Tさん「MINIが千葉の営業所にしかなかったんです。新車です。使ってください」

あざす!

Tさんは高崎営業所に戻り、明日千葉の営業所へ新幹線で戻るとのこと。私は嬉しくて、Tさんにメトロ専売のアンドレガロワを1本差し上げた。

さて、そろそろ最終章にしたい。今回、メカニカル的な不具合は無く、外装だけの修理で自走も出来た。左前タイヤ1本がアルミホイールと共に擦過痕が有ったのでメーカー発注だったのだが、元々履いていた韓国タイヤ(ハンコック)の納期が遅く、アドバイザーSさんのご提案により、BMW認定タイヤで即納可能、との事で、タイヤ4本をブリヂストンのポテンザに履き替える手配をしてくれた。
レッカー運搬費用2万、相手トラックの修理代8万、レンタカー費用21万、私のMINIの修理代150万(全取替)、これらはMINI保険により支払うことで示談が成立。
今回、誰も怪我していないのが幸いで、人身事故ではなくて物損事故となり、私の免許証はゴールドのまま。ただし三等級下がり、単年2万の計6万、月当たり1,700円の保険料が増加することになった。現在は元の等級に戻っている。

事故案件の場合、保険でレンタカーを使えるのは30日間。それを過ぎると、当事者が自前でなんとかしなければならないのだが、MINI伊勢崎の計らいでMINIクラブマンクーパーS(インディアンサマーレッド)を無償で提供してもらい、私のMINIが直るまで、安心してMINIライフを送ることができた。

事故の翌日、
MINIクラブマンでMETRO高崎店へ。閉店式が始まる前、カスタマー代表として挨拶をしてほしいと打診され、私は快諾。マイクを持ったら延々と喋る私。どーやって短く喋るかね。。

私の番になり、御列席の皆さんに挨拶。フランスのメトロの話から私のメトロ愛を披露する。そして、涙目のKさんを手招きし、私は持っている花扇のブーケを手渡す。

Kさん「やめてぇ(号泣)」

私「今まで御苦労様でした(泣)」

涙、涙の閉店式になった。ちなみに、記念のガラポンで1等のモエ・エ・シャンドンのシャンパーニュを私が当てたのは、決して忖度なしの偶然。


おわり