Comment ça vous dire les vins?(ワインってどうよ?) マエセツ

珠姫終わり。

10月から、いや、早いシーズンだと9月下旬から始まるリラダンの生ガキ。1月で終わる年もあれば、3月末まで出荷される年もある。終了のきっかけは常に出荷停止。それさえなければいつまで続くんだろう。未だそれは経験が無い。

フランス人は生ガキが大好き。パリの専門店(海鮮料理屋)へ行くと、水兵の格好でタブリエ(エプロン)を身にまとったギャルソンが凄い早さでカキを剥いてる。ブロン産、マレンヌのカキ、、産地、等級を選んでオーダーする。ダースで選ぶと、砕いた氷の上にズラッと並べて持ってきてくれる。黒パンとバター、コショウ、レモン、エシャロットと赤ワインビネガーが添えられる。合わせるワインは白。シャブリとかムスカデが常道といわれるけど、ずいぶん前に日本の某グルメ漫画でこの相性はダメって言ってて、「生ガキに合うのは日本酒」だと描いてる。

私に言わせると、そういうのは "日本で、日本の牡蠣を、日本の食べ方で食べる場合”に限るのよ。それに、日本人は大きい牡蠣を好むけど、フランス人はそういう "太った牡蠣” を否定する。日本人から見ると痩せてるように見える小さい牡蠣。そういうカキをダース単位で食べる。そう、リラダンで提供する食べ方でね。

「珠姫」は宮城県、本田水産で育てている。社長の本田さんのケータイに電話。

私:「どうすれば出荷が再開したかどうかがわかります?

本田さん:「来週の検査結果が出るのが水曜日だから、木曜日に出せるかも」

私:「わかりました。じゃあ赤城マリンフーズのMさんに言っときますから」

で、木曜日に入荷してホッとしたのもつかの間。検査でノロが出たというのでまたストップ。2月も後半。これはもう終わりかな。本田さんにまた電話しても迷惑だろうし。というワケです。翌朝、高崎総合市場へ。

Mさん:「カキ、他の産地にしますか?」

私:「いや、珠姫ほど安心して食べられるカキは他に無いし。諦めますよ」

1月を過ぎると雪解け水が海に流れ込むので、ノロの陽性が増えてくる。

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本田水産の珠姫。

来シーズンは今年2023年の秋頃からだ。この牡蠣達は昨年2022年の秋頃から育て始める。これは「秋はさめ」といって出荷し、およそ二か月ほどで完売した後は「春はさめ」という、今年の春に稚貝を育て始めたものに代わる。要するに珠姫は「1年モノ」なんです。

巷に出回る牡蠣はほとんど2~3年モノ。天然モノではそれ以上の牡蠣も有る。ではそれらの牡蠣と珠姫はどこが違うのかというと、牡蠣というのは二年目から殻にも栄養を注ぐのと同時に産卵も始める為、身が痩せるリスクが出てくる。一方、珠姫は産卵を経験しないまま出荷するから"お姫様”っちゅーワケです。

生ガキにまつわる話題にノロウイルスがあるんだけど、これは加熱処理を施せば安心して食せる反面、生で食すにはノロウイルスを排除しなくてはならない。海には、大地から流れ込んでくる生活用水や真水が流入してくるんだけど、これらにノロウイルスが存在していて、牡蠣達はコレを体内に溜め込む。珠姫は一年しか生きないから、溜め込むリスクも格段に減る。

牡蠣は一日に200リットル以上の海水を身体に通して生きている。陸地に近い内湾に居る個体は更にたくさんのノロウイルスを溜め込んじゃう。海岸で獲った海産物を「新鮮だから」といって海水でジャバジャバ洗って口に入れるお父さんが居るけど、自殺行為だからやめたほうがいい。海水には、塩水の中でしか生きられない腸炎ビブリオ菌も居るし。あ、この菌は真水の中では生きられないから、水道水で洗うとリスクが減る。

 

本田水産では、自社検査室で毎日ノロ検査をしている。そして毎週月曜日には漁協にある「公衆衛生協会」で同じ検査。更に毎週水曜日、仙台にある「日本微生物研究所」で大腸菌、腸炎ビブリオ菌、ノロウイルスを検査する。この検査体制の中で二個、検体に陽性が出ただけで出荷は停止される。

こんだけ厳しいハードルを越えた珠姫達は出荷前、海水をフィルターに通してあらゆる不純物を除去して塩素を加えた浄化水の中で22時間過ごす。どうよ。←ドヤ顔

 

オーダーが入る。オレが珠姫のひとつひとつを、目ン玉見開いて、殻から外した身を氷水でしっかり洗う。指先が凍るほど冷たい。殻を水道水で洗う。ただ剥いてるだけじゃない。オレは生ガキを"料理”してる。どっかの居酒屋のバイトが使い回しの貝殻にむき身のカキを乗っけてるのと一緒にすんなよ。←実話

 

日本人は養殖物を低く見る。天然至上主義の人がホント多い。天然の牡蠣はどういう育ち方をしたのかわからないから、私は使わない。

 

マエセツ長ぇ。

表題変えたほうがよくね? 

 

アラン・ブリュモン氏が所有するのはシャトー・モンテュスとシャトー・ブスカッセ。モンテュスは比較的価格が高いワインを作っていて、ブスカッセはモンテュスと同価格帯から比較的リーズナブルな価格のワインも有る。夏が終わりに近づいて、そろそろ秋の季節になると、ブドウの発育や天候を見極めて、いつからヴァンダンジュ(ブドウの収穫)に入るかを決める。そうして、手摘みのアルバイト達がたくさん集結するワケだ。普段は事務所に数人しか居なくて、時々来るバイヤー(お客さん)の相手をしている静かなシャトーも、この時期は毎日30人から40人くらいの食事が必要になって賑やかになる。

ブスカッセでは、ナタリーとステファニーの二人がマンジェ(まかない食)を担っていて、私が加わることで二人が交代で休めることになった。二人は見た目ムチャクチャ若い女の子って感じなんだけど、ステファニーには小学校に通う子供がいる。小学校までの送り迎えのついでに、私を車に乗っけてくれることもある。

 

 次回へつづく