エスコートできてる?(男性向け)

フランスへ行ってまず感心するのは、

 

ドアを開けて待っててくれること。これは性別問わず必ずやってくれるのだが、とにかくユーロ圏のオトコは優しいのだ。それゆえ、私見だが、フランスの女性は尽くされることに慣れており、尽くす日本女性はフランスでむちゃくちゃモテる。私がフランスで知り合った国際結婚のご夫婦は奥さんが日本人で夫がフランス人とゆーカップルは多い。フランスの男性が日本の女性を気に入る率はかなり高いっていうのは周知の事実で、お互いが尽くし合うから最高のマリアージュとなる。

 

さて、ここでグンマの男性にお尋ねする。リラダンに来た時、自分は店内を見渡せる上座にとっとと座り、通路側にお連れの女性を座らせるバカモノではなかろうね? そん時はすかさず、

 

 私:「わかってねぇヤツが来た」←怒ってる

 

例外はある。商談など、仕事で来店した二人は、クライアントが男性で、接待する側が女性の場合。まあ、それでもフランスではクライアントが気を利かせて笑顔で通路側に座るもんなのだが。要するに、レストランではオトコが女性を立てるのが鉄則。

19世紀以前のパリは、歩いていると上から汚物が降ってくることがあったので、男性が建物側を歩いて女性を守るのは当然のことだった。男女平等が叫ばれてる昨今だが、生物学的に強いオトコが女性をリードする。それが生き物の使命であり、世界共通のマナーとなっているのは至って自然なことなのである。

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テーブルにワインボトルが有る。お互いのグラスはカラになりそう。気付いた女性がボトルを手に取り、オトコのグラスにワインを注ぐ。オトコはアリガトウと言って見ている。。

 

このオトコ、もうリラダンに来なくていい。居酒屋で女のコにお酌されてニヤニヤしてんじゃねーぜ。ボトルを持つのはオトコの役目。ワインを注ぐのは女性のグラスが先。自分は後回しである。料理の取り分けもオトコの仕事。まず女性の取り皿に料理を取り、自分の分はそのあとだ。自分のグラスにはワインが残ってて、女性のグラスはカラになっている。気が付いた男性はボトルを手にする、、

 

グザビエと食事をしている。真ん中にはシュークルートがある。

 

 グザビエ:「シュンイチ、要る?」

 

 私:「まだあるからいいよ。ありがとう」

 

グザビエは笑顔で自分の分を取る。さすが元エールフランスのチーフパーサー。まずは相手に勧めて、そのあと自分の分を取る。必ず相手に勧めてから自分。グザビエには色々教わったなぁ。私はフランス行って料理の修業をしてきたのではない。フランスの料理を含めた"文化”を見てきたワケ。タバコの吸い方もそう。帰国した成田空港で、まだ残ってるタバコをもみ消す日本人を見て

 

 私:「わぁ、もったいない」

 

あ、誤解なく。私、タバコやらないんで。シガーは持ってるけど。

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入店したら、女性を先に歩かせてもいいし、オトコが先を歩いてもいい。席にたどり着いたらまず女性を上席へ促し、ほぼ同時に着席する。決して先に座ったりしないこと。サーヴィス(店員)から二人にメニューが手渡される。フランスのグランメゾンでは、男性には価格が載ってるメニューが手渡されるのだが、女性の手にするメニューには価格が載っていない。女性が遠慮せずに食べたいものを選べるように店側が配慮しているのだ。この時、女性が3品のコースを選んだら、オトコも3品になるように選ぶ。「オレはもっと食いたい」と4品選んだりしない。相手と品数を合わせるのは大切なことだ。

さあ、席では楽しい会話が欠かせない。スマホはしまっておこう。料理が来るまでの間、歓談するといい。

 

食事が始まる。女性の食べる速度にオトコは合わせる。とっとと食ってスマホを眺めるのは最悪だ。先述通り、女性に気を使わせないようにする。時々グラスに水を注いであげるといい。それだけでカッコよく見える。右手にナイフ、左手はフォーク。右手にフォークを持ち替えて片手で食うのはみっともねぇからやめようぜ。

 

食事が終わる。テーブルの上はパンくずだらけでいい。フランスではおいしかったよというサインだからだ。サーヴィスがきれいに整えてくれるまで堂々としていよう。決してテーブルのパンくずを下に払い落さないこと。廻りの客も店側も嫌な気分になるから絶対するなよ。そして美味しくなかったとしてもおいしかったねといい、笑顔をたやさず食後感を盛り上げる。

 

デザートが運ばれてきた。女性のデザートを誉めて、自分のデザートも「コレもいいよね」と同意を求める。スイーツ談義に花を咲かせて、甘いひとときを過ごそう。デザートが終わったらサーヴィスが皿を下げに来る。その後、テーブルが整えられて、シュクリエ(砂糖入れ)がセッティングされてコーヒーと紅茶が運ばれてくる。香り高いエスプレッソには砂糖をどっさり入れて二口三口でとっとと飲み干し、ドゥミタッスの下に残っているジャリジャリした砂糖はおいしいから、スプーンですくって口に運べばイタリアのじいさんみたいでカッコいい。チビチビと野暮ったい飲み方はすんなよ。このあとどーする?どこか行きたいとこある?などと女性に尋ねるのもいいし、そのままゆっくりくつろぐのもいいだろう。

 

さあ出ようか。会計はテーブルで済ます。サーヴィスを呼び、チェックをおねがいします。女性は気を利かせて化粧室へ行く。オトコはそれを見届けてから支払いを済ます。女性が戻ってきたのでおもむろに席を立つ。オトコが先を歩いてもいいし、女性を先に歩かせてもいい。外に出たら雨が降り始めている。濡れたドアハンドルで女性の手が汚れないように助手席を開けてあげればパーフェクトだ。手を挟まないようにドアを閉め、運転席に乗り込む。。

 

高級店にはパン皿が用意されているが、フランス人が日常使うレストランではパン皿は無いのが普通。食べかけのパンを直に置いてもなんら問題無いし、直に置くのがフランス流。そのかわり、スマホや手帳などをテーブルの上に置くのはやめよう。テーブルというのは食事をするためのエリアであり、机ではない。テーブルは"皿”と同じ。皿の上にスマホやノートパソコンを置いたりしないよね?それと一緒。そう考えれば、テーブルにスマホを置くのをためらうでしょ?そう、ヘンなんです。その感覚を大切にしたい。テーブルの上は食事に類するものだけにしよう。何度も書くが、机と同じ感覚で物を並べないこと。ここは食事の場である。

 

フランス料理という文化は、空腹を満たす以上に、心を満たすものである。相手を想い、自分は二の次。さすれば自然にエスコートしている自分が居る。ここでは夫婦やカップルを例に見立てたが、大人数で食事するのも一人で食事するのも全く同じことが言える。人間っちゅーのは、満腹になりたければコンビニのおにぎり3つ食えば事足りる。フランス料理なんて無くても生きていける。でもそれだと味気ない。心を豊かにしたい時、お気に入りのレストランへ行って、外のクマシデを眺めたり、納車された愛車に想いを馳せたりする。そんなひとときをリラダンで過ごせたら素敵だと思う。

 

 

つづく