花扇に電話。オーナーのKさんにクリスマス用のアレンジメントをお願いするためだ。
私:「それはそうとKさん、ウチのガジュマル君の元気が無くて。葉っぱが枯れて落ちちゃうんですよ」
Kさん:「ずいぶん前から?」
私:「いや、ここ最近です。寒いの苦手なのは解るんですけど、太陽に当てないとと思って。外に出したらダメですかね?」
Kさん:「外は寒いからやめたほうがいいですね。植物は照明でも光合成するから中でいいですよ」
そーなんだぁ!
Kさん:「ビルの中で育てたりしてますからね」
そーだった。確かにそうだ。
私:「都会で水耕栽培の野菜とか有りますよね!」
そこでハッとした私。
私:「Kさん!思い当たることが。実はリラダンの照明を全部LEDにしたんです」
Kさん:「いつですか?」
私:「10月です。1か月前だ!」
ガジュマルが枯れだしたのはまさにその頃からだ。。
Kさん:「LEDだとちょっと弱いかも」
私:「LEDが観葉植物に影響するとは。驚きました」
Kさん:「枯れた葉っぱは取ってください。付けっぱなしはダメ。どんどん取って」
私:「わかりました」
Kさん:「霧吹きで、葉っぱにたっぷり水を吹き付けてください」
私:「水はしょっちゅう吹きかけていいんですか?やりすぎとか気にしないでどんどんあげていいんですか?」
Kさん:「肌にうるおいを与えるのと一緒。やさしくね。女性と同じ♪」
私:「わかりました・・」←自信無い
・・・・・・・・・・
このテーマを取り上げるのは何度目だったかな。
話は脱線しまくりなので、気長にお読み頂ければ幸いだ。
パンにバターを添える。これは原則、フランスでは朝食の時だけだ。
クロワッサンとカフェオレというのが一番シンプルで、これにジャム、バター、硬質チーズ、果物や100%ジュース、それに生ハムなどが付けばかなりゴージャスな朝になる。
卵料理は私の在仏時見たことはないが、家庭によってはあるかもしれない。
私がお世話になった場所で、フランス南西部の民宿がある。主は、エールフランスのチーフパーサーを
定年退職し、奥さんと二人で営む。民宿の名はシャトー・デュ・テイル(Château du Tail)
民宿といってもお城で、いわゆる古城なんだけど、近代的なピシーヌ(プール)も備える滞在型
リゾート民宿だ。←ヘンな和訳
グザビエ・ボラックさんが主人で、立派な口髭をたわわにしたジェントルマンと、
奥さんはクロディというドイツ系の物静かなマダム。それと隠居のマドレーヌばあちゃん、
それにマルチーズ犬のディアンヌ。私はクロディに尋ねる。
私:「このコはなんでディアンヌっていうの?」
クロディ:「フフ、呼び鈴みたいにうるさいの」
なるほど!
呼び鈴は仏語でディアン(男性名詞)っていうんだけど、このコは女のコだからディアンヌ(女性名詞)っていうワケね。
シャンブルドットが通常のホテルと違うのは、
夕食時はお客さんと一緒に食事をするのである。朝食はダイニングで前述のような
感じで摂り、その後お客さんは車で出かける。帰ってきたお客さんを自宅のテーブルや
別室のダイニングでもてなす。こういうのをフランスではシャンブルドットという。
裏のガレージを覗くと、黄色いフェラーリがひっそり停まってたりする。
外国のお客さんだね。英語喋ってたから。
私はそこでの調理補助を仰せつかったのと、芝刈りとかキノコ採りとか、
家族の食事を用意したりとか、まあそういうことをフランスでやっていたわけです。
だから星付きレストランで修業とか、そういうのは私には無い。
古いお城をリノベーションした素敵なシャンブルドットだ。
私にあてがわれた部屋も、部屋といっても20畳はあろうかと思う広さで、
暖炉が有って、書斎が有って、ベッドはどの向きになっても足がはみ出ない(身長181cm)大きさで、しかも天蓋(てんがい)に覆われている。天蓋っていうのは、四隅に柱があって、屋根状の布とドレープカーテンがベッドを包んでいる、王女様が使うようなベッド。
私も、さながら王子様にでもなった気分。
シャトーデュテイルが有った場所は、フランス南西部マディラン地方、カステルノー・リヴィエール・バッスという村。ピレネー山脈のふもとで、踏切はひとつあるけど誰も一時停止しないね。見渡せば数キロ先まで見えるから停止なんて要らないけど、当初私は律儀に一時停止。その後徐行になり、数日後には軽く減速しただけで踏切渡ってた。
私は国際免許を取得してたので、グザビエが黒のフィアットパンダを貸してくれて、数キロ離れたワイナリーまでバイトに行ってたんだけど、途中でタンク(戦車)とすれ違う。仏軍の戦車がフツーに路上で待機だよ。
私はフィアットを降りる。当時はデジカメとかないから普通のフィルムカメラを手にする。
ルーフから半身出して、インカムで通信していた兵士に、
私:「写真撮ってもいいですか?」
兵士さんは無言でうなずく。←やさしい
・・・・・・・・・・
フランスは、ビストロとガストロノミーとの区別がつかない店が点在している。そういうジャンルは自然にカテゴライズされ、ネオ・ビストロと言われたけど、その後、ビストロノミーという造語も誕生して、私的にはネオ・ビストロの方がしっくりくる。
これら高級ビストロの大半は基本、バターは置かない。客に言われたら出す店もあるが、言われても出さない店もある。
そんなこと言ったって、どこに行ってもパンにバター出てくるじゃん!
という声があちこちから聞こえてきそう(笑)。あのー、それはですね、フランスでも日本でも、高級フランス料理店などでは不足が無いことを求められるから「バターはアリマセン」っていうワケにはいかないンですよ。そういうのを高級じゃない店が「ウチも真似しよう」「修業した店がバター出してた」「パンにはバターだ」と始めるもんだから、バターが有るのが当たり前になっちまってワケわかんなくなっちゃった。
余談だけど、イタリアンでパンにオリーヴオイルを添える習慣も実は流行によるもの。本来、パンにオリーヴオイルと塩を付けて食べるのは乞食がすることだとイタリアでは言われているんだけど、実際この食べ方ってホントにパンがウマい。イタリアのパーネ(パン)っておいしくないから食べないって言うイタリア人も居る。おいしくないパーネを塩とオリーヴオイルで食す。お金の無い乞食は頭が良いね。
そんな中、ミシュランのエトワール級の店でもこだわりのオリーヴオイル、パンの横に出したりします。
いいのよ別に。ただね、乞食が食うやり方を気取った人がレストランで訳知り顔でやってたりすると私は苦笑いしちゃうのです。ちなみにイタリアで食事に招かれて、食卓にオリーヴオイルが無くても「欲しい」と言ってはいけませんよ。"料理がマズい”という意味にとられるようです。だから、私に言わせるとね、パンの横にオリーヴオイルを添える店は"料理に自信が無いから” という意味になっちゃうのよ。
もともと南北に長い国土イタリアという国は、北イタリアでは料理にバターを多用する。バローロやバルバレスコといった赤ワインを産出するこちらでは、生クリームやバターとも相性は良い。一方、イタリアを南下していくと、太陽の恵みによってオリーブの木が良く育つのか、料理にはオリーブオイルを多用する傾向がある。何を言いたいのかというと、南イタリア料理ではオリーブオイルと相性が良いからパーネに添えても良いんだろうけど、北イタリア料理にオリーブオイル、、というのはマリアージュ的にどうなのかな。ことに高級イタリア料理といえば北イタリア料理が多いワケで、なおさらリストランテに行ったらパーネの横にオリーブオイル、、っちゅーのはまぁヘンな気がするのです。とはいえ、昨今のシェフ達は世界中の食材を使うので、これに限った理屈は合理性を欠くのかもしれないんだけど。
過去、席で待つ間にパンを食べ始めてしまったお客さんが居て、テーブルに料理を持ってったらパンが無かった、、ということがある。レストランでパンだけを食べてるのは、まるで飢えに耐えられないみたいで(その通りなンだろうけど)。また、パンはかぶりつくのではなく、手でちぎって口に入れると格好良い。
所作が美しい人がリラダンの一角に座ると、リラダンまで素敵に見えるから不思議。
今日も明日も、リラダンはフランスの日常を共有する。
つづく