L'Avenue de la Larme

11月21日。天気は、まあ、どうでもいいか。

食品衛生講習会。三年に一度受講しないと商売できない仕組みになっている。

午前の部に出たらランチができない。飲み屋だったら出られるけどウチはレストランだから。といっても、午後の部は13時45分から始まるので、いつも通りの営業っていうワケにはいかず。

13時をラストオーダーにする。遅くも13時20分にはリラダンを出発しないと間に合わない。

ランチは意外にも忙しく。片付けながら、戻ってからの仕込みも準備し、、

車に飛び乗るように私はリラダンを出たのだった。

毎回、もてなし広場が臨時駐車場になっているのは知っている。クルマを停め、交差点を渡って、高松町にある保健福祉事務所へ向かう。

ウチは4回目か5回目か。15年目って何回目だ?出席する顔ぶれは古株を筆頭に、私と同じような生き残っている者達と、幸いにも3年続けた者達が席に着いているのだと推察される。ざっと200人弱。あ、これはたまたま開業したのが同じ時期だったというだけで、こういう講習会は毎月のように開催されているのだろうと思っている。。

いつもはトイレ休憩が1回入るのだが、今回は無いので驚いた。16時までぶっ通し。さすがの私でさえ、睡魔が。

でも、寝ている人がそれほど多くない気がする。みんな真面目に頑張ってる。オレもがんばんなくちゃ!

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東京まで2時間位車を運転するのはワケ無い。だって楽しいもん。だが、今回のような講義を黙って2時間聞いているのは辛い。

そりゃきちんと聞きましたョ。実際、大切なことですョ。でもね、ズボンをはき替えてからトイレ行けとか、今回のような人込みに来る時にはマスクをして来いとか、

ステック・タルタルもダメ、生ガキもダメ。そのうち、外のテラスで食事も出来なくなっちゃうかも。

フランスでこんなこと言ったらセンセイ、袋叩きに合いますョ。

海外の飲食業界関係諸氏が今日の講習会に出席したらあちこちから失笑が漏れると思う。

議論が必要なのは、そういうことじゃないのではないだろうか。

日本の食文化が、ホウリツとかセキニンとかで、どんどんヘンになっていく。あ、でも良いこと言ってた。

 

 センセイ:「プライド持って料理作ってますか?」

 

返送用の封筒に店名と自分の名前を書いた。見回すと、どこのテーブルも無記名もしくは表紙を伏せて退出。解るけど、それってどうなんかね。

食品衛生協会の人は仕事、大変ですネ、、。

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 私:「ふぅ」

とりあえず、冷蔵庫からチリ産のソーヴィニョン・ブラン(白)を取り出してグラスに注ぐ。

リラダンのカフェテーブルに座り、外を眺めたらご年配のムッシュと目が合い、お互い目を反らして。でも、

私はすぐ外へ飛び出し、ムッシュが歩いていく住宅街へ早足で追う。

 私:「こんにちは」

 ムッシュ:「あぁ、どうも(笑顔)」

 私:「一瞬、わかりませんでした。お元気でしたか?」

何年も前から、そう、ずっと昔から、このムッシュは朝と夕方、リラダンを犬の散歩で通るご近所さん。時間は決まっておらず、毎日会うことはなかったけど、たまに外で出会うと私の方からご挨拶をしていた。もう17時近く、肌寒くなって薄暗い道路で私は呼び止めたのである。

 ムッシュ:「実は、入院していて」

 私:「どこが悪かったんですか?」

 ムッシュ:「心臓。肺もね(笑)。入退院をくりかえしてた」

 私:「もう大丈夫なんですか?」

 ムッシュ:「うん。器械を入れてるから(笑顔)」

 私:「今日、ワンちゃんは?」

 ムッシュ:「あ、6月に死んじゃった」

 私:「え!あんなに元気だったのに」

 ムッシュ:「13年生きたけど。腎臓のクスリ飲ませてて、それで肝臓悪くしちゃって」

 私:「そうでしたか。ワンちゃん居なくなって体調崩したのでは?」

 ムッシュ:「そう(笑)。散歩やめて2週間後(に病院)」

 私:「心臓だから痛かったでしょう?」

 ムッシュ:「痛いというより、苦しくてね。息出来なくてね(笑顔)」

それで、ウォーキングでしたか・・

 私:「今度、ウチに寄ってください。温かいお茶、淹れますから。すみませんでした、呼び止めちゃって」

お互い、頭を下げ合う。

ムッシュには以前、ご家族でリラダンをご利用いただいたこともあった。その時私は気づかなくて、後日、「(食事に)行ったんだよ~」って言われて「ええ~!ありがとうございましたすみません」とゆーこともあった。。

ワンちゃん、雑種だったが、足取り軽く、跳ねるように歩いていた。

 

リラダンに戻り、サザンのCDを挿入。

一人、ワインを呑んだ。