"匂い”と“香り”

富士見でヤギのフロマージュを作るKさんの所へ向かった。

この日は、ただ単にチーズを買いに。私はいつもゲリラ出没。理由は、事前に行くことをKさんに伝えれば、Kさんの行動を縛ることになるから。もしKさんが不在ならば帰ればいいだけ。そうだとしても徒労だと思わない。そう考えている。

Kさんのご自宅に到着した私は、クルマから降りる。赤城の山中にあるご自宅の外では、ラジカセから大きな音量でラジオのトーク番組が流れていて、

 私:「クマよけなんだぁ・・」←思わず廻りを見渡す

スマホを取り出し、Kさん宅に電話。

 私:「フランス料理リラダンのOと申しますが」

 Kさん:「えーっと」

 私:「高崎で、フランス料理店を営んでいる、リラダンの、Oといいます♪」

 Kさん:「・・あ!」

 私:「あっはっは!お客さんいっぱい居るから(忘れちゃってもしょうがないです)」

 Kさん:「どうもどうも」

 私:「今、ご自宅の前に居ます」

間もなくご自宅から出てきてくれたKさんに私はご挨拶をし、

 私:「シェーヴルをふたつ、買いにきたんですけど、出せそうなの、有りますか?」

 Kさん:「まだ(熟成)2週間目で」

 私:「ウチで熟成させてみたいです。売っていただければですけど」

Kさんは快諾してくれたのだった。実はKさんのチーズ、スゴい人気で品薄なのである。Kさん、スンマセンです。

 Kさん:「“白カビ”ですか?"灰”ですか?」

 私:「灰もいいんですけど白カビで。“外皮”がまたたまらないんですよ~」

 Kさん:「灰も外皮できますよ」

Kさんはそう言いながら試食を勧めてくれる。うん、おいしい。けどやっぱり、、

 Kさん:「どうですか」

 私:「白カビみたいな"皮”はできないんですね」

 Kさん:「そうですね」

その後、Kさんは私をご自宅に招いてくれたのだが、

 私:「今回は買いにきただけなんで、これで失礼します」

そういいながら、奥様も交えて三人で外で話す。

 Kさん:「“匂いが”ってよく言われて」

 私:「ウチも(笑)。ラム肉とか」

 Kさん:「匂いっていうのは」

 私:「(Kさんを遮って)"クサいですか?”って訊くヤツは食うなって言うんですヨ」

 Kさん:「そうそうそうそう!」←激しく同意

 私:「“レバーの臭みを取る”とかいって牛乳に漬けたりするでしょ?あれは臭みじゃなくて"香り”なんですョ。臭いって思うん

    だったらレバー食うなっつーのよ」

 奥様:「そーう!」

奥様も横で激しく同意。

三人で、激しく盛り上がったのだった。。

・・・・・・・

後で知ったのだが、Kさんによると今回、白カビをひとつと、もうひとつは"酵母菌チーズ”だとのこと。

 Kさん:「白いのは白カビ。黄色っぽいのが酵母菌です」

 私:「わかりました」

前回、熟成させまくって最後、モンドール(ウォッシュタイプの有名なチーズ)みたいになった。皮がブ厚くなって、中身がトロトロ

に。スプーンですくうような、まさにモンドール。

 私:「すんごいおいしくて」

 奥様:「ヴァシュラン・モンドールみたいになったでしょ!アレがまたおいしいんです」

わかるわかるわかるわかる。

こういう、解り合えるヨロコビ。

最高だ。

 

おわり